偏頭痛の前兆~動くギザギザ~

 

症状と原因

偏頭痛が起こる前に視覚の異常が起こります。人によって表現が様々ですが、主にキラキラ、ギザギザが動きながら広がり、視界を遮るという体験談が多いです。
きらきらしたり、ゆらゆらしたり、暗くなったり、見えづらくなったりしながら、だんだん視界を覆っていきます。その状態がしばらく(5分から40分くらい)続き、視界を遮るものが消えたあとに偏頭痛が起こるとされています。
眼科的な異常ではなく、偏頭痛の原因である血管の拡張によって、血液の流れが一時的に変化するためであると言われています。まだはっきりとした原因はわかっていないんですね。
閃輝暗点」や「閃輝性暗点」と呼ばれています。

 

芥川龍之介の『歯車』

小説家の芥川龍之介さんの『歯車』という短編の中「絶えずまわっている半透明の歯車」と表現されているのが、この前兆症状ではないかと言われています。「歯車は次第に数をふやし、半ば僕の視野を塞いでしまう、が、それも長いことではない。暫くの後には消えうせる代わりに今度は頭痛を感じはじめる」と書かれており、閃輝暗点の見本のようだなと思いました。
この小説が書かれた時代には。偏頭痛の前兆症状があるということは知られていなかったようで、小説の主人公は眼科のお世話になっています。目の異常だと思っているのです。この現象のせいではないようですが、精神科にも通っているので、あるいは幻覚のようなものと思っていたのかもしれません。そのことをうかがわせるような記述はないですが、この「歯車」という短編が遺作になったことを考えると、かなり歯車に苦しめられていたのではないかと思います。もしも、この時代に歯車が偏頭痛の前兆症状だということがわかっていたとしたら、芥川龍之介はもう少し生きていてくれたのでしょうか。

 

私の歯車体験

偏頭痛とは長いつきあいです。ですが、今のところ、歯車が現れたのは1度だけです。私の場合は、セロファンでした。グレーがかった色がついていて、くしゃくしゃになったセロファンが動くので、反射でキラキラしていました。
テレビを見ていて、テレビの端がなんだかおかしいと思ったのが最初です。少しして、おかしいのはテレビじゃないなと気づくのですが、もともと眼の病気をしたせいで、少し視界が欠けており、そちらが再発したのではないかと心配になり、白い壁を見て確認しようとしました。するとおかしいと思った部分は暗い色のセロファンのような、セロファンをくしゃくしゃにしたようなもので、本当に歯車のように回りながら少しずつ広がっていくのです。偏頭痛の前兆症状に、このようなものがあることは知っていたので、パニックになるようなことはありませんでしたが、どんどん視界が奪われていき、ほぼ全てが暗い色のセロファンに覆われてしまったので、トイレに行くこともできませんでした。家にいる時でよかったなぁと思いながらじっとしていたのを覚えています。
15分くらいすると、だんだんセロファンたちが動きながら面積を減らしていって、そこから5分くらいで全て消えてしまいました。その後に少し頭痛はありましたが、普段の頭痛よりずっと軽いもので、薬も必要ないくらいでした。
視界が完全に奪われてしまうので、かなり怖いです。でもとても貴重な経験だったなと思います。